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エピローグ


■幕間のエピローグ⇒第二ラウンドのプロローグ

 なんだか非常に場違いな気がして、まりもは肩身が狭かった。
 特別な日のデートでも入らないような店に用意されたテーブルで人を待っている。煌びやかな空間は、なかなかどうして馴染めない。
 ここは壁一面がガラスでできた高層ビルの最上階だ。目を外に向ければ、都会の灯りが夜を明るく照らしている。
 そっと左手首を返して時計の針に目をやれば、約束の時間まであと十五分以上ある。それまで特にすることもなく、だからといって周囲をじろじろ観察するのも問題がありそうな気がして、仕方がないのでまりもはここに至るまでの経緯を思い出すことにした。





 あの後の流れは、それまでと同じくらいに忙しなかった。
 まず、御剣の姉妹が現れた。ご無沙汰しておりました、との挨拶はあったが、どうにも気が急いている様子。
 そして妹の方がいった。

「タケルはどのようにしておりましょう?」

 タケルというのが誰を指すのか、咄嗟にはわからなかった。が、振り返り夕呼と目が合えば、すぐにわかった。
 夕呼は肩をすくめた。

「隣の部屋にいるわよ。もっとも自分が白銀武であるとは知らないみたいだけど」

 それに驚愕したのは果たして誰だったのか。
 どういうことかと訊く数人に、夕呼は何でもないことのように答える。

「なんだか記憶喪失みたいなのよねぇ。あたしが撥ね―――」
「もしや鑑さんの、ええと……」
「ドリルミルキィです、姉上」
「そう、そのドリルミルキィとやらで飛ばされた衝撃で、武様は記憶を失われたのでは」

 なにかいいかけた夕呼を気にせず会話を進め、双子の姉妹は何らかの結論に至ったようだった。

「なんということだ……」冥夜が呟く。「月詠! すぐにタケルを病院へ」
「既に手配は済んでおります」
「そうか。では今すぐタケルを。申し訳ありませんが、神宮司教諭、また後ほど正式にご挨拶とお礼に伺いますので」

 丁寧さを忘れない彼女らが、なりふり構っていられないほどの大事だったのだろう。今回の出来事は。
 そのようして、嵐のようにやってきた懐かしい顔は、嵐のように去っていった。隣の部屋でなにやら物凄い音がした気がしたが、その詳細は知れない。
 まりもは難しい顔をしている夕呼に話しかけた。

「さっき、なんて言おうとしてたの?」
「別に面白い話じゃないわよ? まりもの家にあいつを連れていった日、実はその前に轢いちゃってたのよね。で、あたしはあいつの記憶喪失を自分のせいだと思ってたってわけ。まあ数日で治るだろうし、その間にまりもとできちゃえば面白く、じゃなくて、まりもにもチャンスが来るんじゃないかと思ったんだけど、まさかどっちからも手を出さないなんて予想外だったわ。あ、もうわかってると思うけど、クローン云々に関してはまったくの作り話だから」
「―――――」

 言葉を失うまりもを前に、夕呼はいった。

「それじゃ、今日はもう疲れたし寝るわ。おやすみ」





 さらに数日後のことだ。
 今度は、記憶を失っていた間の記憶を失った武が、悠陽や冥夜と共にやってきた。その間なにがあったのか聞きに、そして迷惑を掛けた謝罪に、ということだった。
 その場に居合わせた夕呼がいった。

「あんた、女を抱いておいて記憶がなくなったなんて言い訳が通じると思ってんの?」





 そしてまりもはいま、この場所にいる。
 本来は双子の姉妹が雌雄を決する場であったとか聞いているが、どうして自分までもが新年早々そんな所にいるのか。

「……はぁ」

 ため息が漏れた。
 まったく、本当に彼らとは奇妙な縁があったものだ。いや、それどころか自分も『彼ら』の中に加わろうとしているらしい。
 さて、どうしたものか。夕呼などは「あんたは例の淑女同盟に加盟してなかったんだから後出しもアリよ」などというが、気が引けるのも確かだ。
 正直、これからの身の振り方は決まっていない。けれども感情がどの方向を向いているのかは、もう無視しようとしてもできない事実としてまりもの中にある。
 久しく訪れなかった決戦を前にして、まりもは気を引き締める。
 やがて、元生徒にして現ライバルの二人が現れた。



モドル